2024.09.09

Data of Data Scientist シリーズ vol.59『77% - 社内のデータサイエンティスト育成で生成AIを利用している割合』

データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けに毎年アンケート調査を実施しています。今回は、人材育成における生成AIの利用を切り口として、調査結果から考察します。

一般(個人)会員向け2023年調査結果:https://www.datascientist.or.jp/news/n-pressrelease/post-2809/

2022年11月にOpenAIが対話AIサービス「ChatGPT(GPT-3.5)」を公開したことを契機に、Google、Microsoftなど各社がサービスを次々と公開し、生成AIのツール・アプリ・ソフトなどの一般利用が一気に普及してきています。現在も生成AIを取り巻く環境は、目まぐるしく変化し続けており、ビジネスの世界でも、生成AIが企業にとっての機会と脅威になりうることが広く認識されています。そのため、あらゆる業界のさまざまな企業が、従業員に生成AIの利用を促す試みが進んでおり、企業に所属するデータサイエンティストにとっても、生成AIに関連したプロジェクトを担当する機会は増えています。

 

データ分析に関わる人の生成AIの利用状況を業務別に見たのが以下のグラフです。

データ分析・解析人材の採用・配置業務を行っている人と、営業・提案業務を行っている人の生成AIの利用が5割を超える結果となりました。次いで、社内のデータ関連人材の育成を担当している人の生成AI利用が42%と続きます。「業務に使えるか具体的に試している」層も加えると、77%が生成AIを業務に利用することに積極的、前向きなことがうかがえます。人材育成の領域においても生成AIの利用が活発に議論されている、という状況を反映したものと考えられます。

人材育成において、生成AIはどのように利用できるのでしょうか。せっかくなので、ChatGPTに聞いてみました。回答結果は以下の通りです。

(問い「人材育成における生成AIの利用方法を教えてください」)

生成AIは人材育成に非常に役立つツールです。以下はその利用方法のいくつかです:

  1. トレーニングプログラムのカスタマイズ:個々の社員のスキルや知識に応じたパーソナライズドなトレーニングプログラムを作成できます。AIが提供するリソースや演習は、各人のニーズに合わせて調整可能です。
  2. 教育コンテンツの生成:教材や研修資料を迅速に作成することができます。例えば、講義スライド、クイズ、ケーススタディなどを自動生成し、学習内容を豊富にする手助けができます。
  3. フィードバックと評価:学習者が提出したレポートや課題に対して、AIがフィードバックや評価を提供することができます。これにより、迅速かつ具体的な改善点を得ることができます。
  4. 学習の進捗管理:学習者の回答や学習の履歴に基づいて、学習の進捗状況を可視化し、必要なサポートや補完的な学習コンテンツを提供することができます。
  5. 知識の蓄積と共有:社内の知識やノウハウをAIが蓄積し、共有することができます。AIが過去のプロジェクトや成功事例に基づいたアドバイスを提供し、学習の効率を高めます。
  6. スキル診断とプランニング:AIを使って社員のスキルセットを診断し、それに基づいて今後のキャリアパスやスキルアップのプランを提案することができます。

生成AIは、教育や研修の効率を大幅に向上させる可能性がありますが、適切な使用と人間の指導とのバランスが重要です。AIはあくまで補助ツールとして活用し、最終的な判断や指導は人間が行うことが理想です。

〈ChatGPT(GPT-4o mini)による回答を引用〉

最後の補足部分も含めて、非常に興味深い回答ですね。昨今、一律の知識付与ではなく、対話を重視したワークショップ型の学びの場や、一人ひとりが必要なものを必要なだけ学ぶという学習スタイルが主流になってきています。そういった点で、個々の社員のスキルや知識に応じたパーソナライズドなトレーニングプログラムの作成は、ニーズが大きいところかもしれません。社員のスキル・知識レベルの評価・診断なども生成AIで効率化し、それに基づいて生成AIでプログラム・教材を作成し、そこで学習した結果をまた生成AIで評価・診断するという学習サイクルのループを回すこともできそうです。

 

一般(個人)会員向けアンケート調査では、育成プログラムについて「データ分析・解析に従事する専門人材向けの育成プログラムがあるかどうか」も調査をしています。結果は以下の通りです。

これを見ると、育成プログラムを備える企業・組織の割合は、過去8年では緩やかな上昇傾向にありますが、ここ2年は27%と横ばいになっています。育成プログラムの整備に関して頭打ち状態になっていますが、生成AIをうまく使いこなしていくことで、この状況を打開できる可能性があります。

 

もちろん、教育や人材育成の領域において、生成AIを利用することの是非、使用した場合の問題点については議論も続いており、そこにもしっかりと目を向ける必要があります。その上で、気軽に相談できる補助的なツールとして生成AIを使いこなしていくことで、業務効率化や改善、新たなサービス、価値創造につなげることができるかもしれません。
特に、育成プログラムを整備しようとして悩んでいる育成企画者、データ分析人材の育成担当者は、たとえば、育成プログラムや教材のたたき台として、全体的な構成を検討・生成してもらったり、こちらで作成したものに対してフィードバックをもらって修正したり、といった使い方はすぐに試せるところかと考えます。まずはできるところから、生成AIの利用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 

データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 市塲大夢

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