2025.03.21

【イマドキのデータサイエンティストに迫るvol.4 前編】

【イマドキのデータサイエンティストに迫るvol.4 前編】

データサイエンティストの業務内容や働き方の実情を、多くの人に正しく知ってもらいたいと考え、企画を始めたインタビューシリーズ。 

第四弾は、株式会社りそなホールディングスのデータサイエンス部のデータサイエンティスト、福井慎二郎さんにお話を伺います。

株式会社りそなホールディングス

福井 慎二郎 氏(31歳)

中途入社・データサイエンティスト歴1年目・データサイエンス部

 

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−株式会社りそなホールディングスのデータサイエンス部のデータサイエンティスト、福井慎二郎さんにお話を伺います。まず、現在の業務内容について教えていただけますか。

福井さん: 主に銀行のビジネス部門の悩みごとの解決に繋がる案件の分析に取り組んでいます。契約する可能性が高いお客さまを予測する機械学習モデルの構築や、OCR技術を用いて画像からテキストを抽出することで作業者の業務負担を軽減する案件、AWSの画像解析サービスなどを用いた業務改善などがあります。

 

−データサイエンティスト歴1年で、キャリア採用でご入社されたということですが、前職ではどのようなお仕事をされていましたか。

福井さん: 前職はメーカーでした。エンジニアとして働いていて、主に2つの業務を担当していました。1つは工場で使用するアプリ、特に画像を用いる工場のアプリの開発を行っていました。もう1つは人工衛星の画像処理で、人工衛星が撮影した画像に対する補正処理や画像を地図上に重なるように変形させる幾何補正等をしていました。また、AIを用いたモデル構築も検討していました。

 

−現在の業務と前職のお仕事の関連性も高そうですね。今の会社でも活きている前職のご経験は、どのようなものがありますか。

福井さん: 機械学習によるスコアリングや、AIの画像解析の技術が活きていると思います。OCR技術を用いて伝票の画像から文字を抽出する業務などに活かすことができています。

−福井さんは、画像解析に特化した技術をお持ちだと伺いました。銀行で行う画像解析にはどのような業務があるのでしょうか。具体例をお聞かせいただけますか。

福井さん: 例えば、 契約書の確認などに画像解析の技術が活用されます。今までは契約書の確認を行う際、考慮すべき特定のワードが含まれているかどうかを、目視でチェックしていました。画像解析の技術を用いて画像から特定のワードが含まれているかを判定することで契約書の確認工数を減らすことができています。

銀行では取引の電子化を進めている一方で、紙も未だに多く使用されているため、紙からデータに落とし込む際に手作業で入力をしていることがあります。紙からテキストを抽出し、使用者が望むデータ形式で返すような場面で画像解析の技術を使いはじめています。

 

−案件に関して、どのような案件内容・規模のものが多いのでしょうか。

福井さん: 私の所属するグループでは、機械学習を用いて契約者の増加など予測する案件や、OCR技術や自然言語処理を用いて業務の半自動化を行う案件などがあります。他にも、生成AIを利用したチャットボット構築などの案件もあります。

案件規模はその内容にもよるのですが、平均的に3カ月~5カ月程度かかるものが多いと思います。私が担当している案件はそれよりも少し長いものもありますね。

 

−かなり長期間で一つの案件に携わるのですね。印象的なエピソードはありますか?

福井さん: 印象深い案件としては、当社食堂での食器画像解析プロジェクトがありました。食堂はカフェテリア方式で食器ごとに料金が決まっているのですが、食堂利用者が食べ終えた食器画像を解析して、食べた分の合計料金を自動算出し、キャッシュレス決済での支払いに繋げるというものです。その案件自体がチャレンジングなものだったこともあり、社内でどう進めていくのか、一から携わることができたのが印象に残っています。それに加え、前職ではなかったことですが、協業企業(*1)とも連携してプロジェクトを進めていく経験ができたことも大きかったです。

*1 資本業務提携を結んでいる株式会社ブレインパッド。データ分析を専門とする企業。

 

−担当する案件は、どのように決まっていくのでしょうか?

福井さん: 「自分はこういった案件をやりたい」ということを事前に上司に伝えておくことで、希望した内容に沿った案件を任せていただくことが多いです。

 

−現在の仕事の満足度を100点満点で評価すると何点でしょうか。率直な感想をお聞かせいただけますか。 

福井さん: 満足度で言うと相当高いです。点数をつけるなら90点くらいは希望通りの仕事ができています。私の場合、転職をした理由がAI関連、特に画像解析のAIに携わりたいというものでした。現在の仕事でスコアリングの機械学習やAI画像解析など、希望に沿った業務ができていることが満足度が高い要因ですね。

残りの10点は主にセキュリティによるデータの取り扱いの制限や通信速度の面です。当社は金融機関ということもありセキュリティを特に重要視しています。そのため、データの取り扱いに制限があり、案件が進みづらいと感じる場面が出てくることもあります。ただ、このような課題を解決していくための議論もされており、今後はこれらの課題も徐々に解消に向かうだろうと思っています。また、前職では職場の座席が固定されていて有線LANでの通信でしたが、今はアドレスフリーで無線のため、比較するとWi-Fiの通信速度が遅く感じることもあります。今のほうが働き方の自由度が高いですから、良いことの裏返しでもありますけれどね。

−入社して1年ですが、スキルアップをしていると感じますか。自己評価をお聞かせください。

福井さん: はい、全体的にスキルアップはできていると感じています。入社前はクラウドスキルやSQL技術はほとんど持っていませんでしたが、案件を通じて経験を積むことで身につけることができました。

また、人前で発言する機会も増えました。前職ではあまり経験がありませんでしたが、入社後はさまざまな場での発言の機会を多くいただいていると感じています。未熟ではありますが、ビジネス的なスキルも身についてきていると思います。まだ磨かなければいけないところはありますが、少しずつスキルアップできているかなと感じます。

 

−さまざまな成長の経験を得られているのですね。成長を実感する一方で、ご自身の課題についてはどのようにお考えでしょうか。 

福井さん: ビジネス面のスキルになるのですが「人に伝える」ことが一番課題だと感じています。例えば、基本的なことですが、AIや機械学習に関することを相手方に説明する際に専門用語を使ってしまったり、相手のスキルに十分配慮せず話してしまうことがあり、気をつけないといけないと思っています。

 

-ご自身のキャリア展望についてもお聞きできますでしょうか。

福井さん: データサイエンスの領域はとても幅が広いので、自身がどういったスキルを学んでいくか、今も考えることが多いですね。例えば、音声分野がいいのか、もっと画像解析の知見を高めたほうがいいのか、あるいは統計などの知識を深めたほうがいいのか。長期的な自身のキャリアを展望する中で悩むこともありますね。

 

−資格の取得や勉強会など、会社が個人のスキルアップを補助する仕組みはあるのでしょうか?

福井さん: 各種の銀行業務検定や宅建、FPなどのいわゆる銀行員らしい資格のほか、IPAのITパスポートや基本情報技術者、応用情報技術者、統計検定など、たくさんの資格で補助が出る仕組みになっています。データサイエンティスト検定は、現在(24年9月時点)では資格補助の対象ではありませんが、それも含めて今後さまざまな資格の補助が検討されていくと思っています。 

資格取得や勉強会は会社からの強制ではなく、各々が自主性を持って学んでいける環境だと思います。外部の学習プログラムも採用されていて、外部セミナーの無料受講のほか、公募での大学院への留学制度もあります。また、横のつながりで学び合うサークル活動的なものに参加している方もいます。サークル活動でいうと、例えば「Pythonを学び合う会」といったものが開催されています。講習会などにも豊富に参加させてもらえるので、やる気があればどんどん技術は磨けると思います。

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https://www.resona-saiyo.com/index.html

取材日:2024年6月17日

インタビュー:

データサイエンティスト協会 企画委員会

株式会社分析屋 徳永

株式会社GRI 小林

 

ライター:

株式会社BICP DATA 山田

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