2024.06.27

Data of Data Scientist シリーズ vol.56『21% - データ分析業務従事者のジョブ型雇用の割合』

データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けのアンケートを毎年実施しています。今回は2023年度調査で新たに調査項目に加わったデータサイエンティストとジョブ型雇用の結果について詳しくみていきます。

 

一般(個人)会員向け2023年調査結果:https://www.datascientist.or.jp/news/n-pressrelease/post-2809/

ジョブ型雇用とは、特定の職務や役割に対して明確な仕事内容や成果を求める雇用形態です。一方で、特定の職務に限定されず、企業の一員としてさまざまな業務に従事する、日本の伝統的な雇用形態はメンバーシップ型雇用とよばれます。専門性を高め国際競争力を上げることを目的として、近年ジョブ型雇用が注目を集めています。
2023年度の一般(個人)会員向けアンケートにおいて、「あなた自身の雇用制度は「ジョブ型雇用」ですか」という設問では、データ分析業務に従事する人のうちジョブ型雇用である割合は21%という回答結果でした。一般ビジネスパーソンを対象にした結果と比べてみると、日本のビジネスパーソンの割合29%よりやや低い結果となっています。米国の一般ビジネスパーソンの割合は65%となっており、日米で差が大きくなっていることがわかります。

日本企業において、ジョブ型雇用の障壁になりうる理由として、1)文化の問題、2)人材不足、3)教育コストなどが考えられます。1)については終身雇用や年功序列を重視する企業が多く残っており、ジョブ型を導入するには、大幅な制度改革が必要になります。またジョブ型雇用では特定の業務に対して必要なスキルを持った人材が必要になりますが、労働人口が減少傾向にある日本でスキルの高い人材を十分に確保するのは容易ではありません。またジョブ型に適するために企業側も従業員側も新しい働き方に対する教育と訓練が必要です。

次にデータサイエンティストのジョブ型雇用について詳しくみてみます。専門性の高いデータサイエンティストという職種とジョブ型雇用は親和性が高いようにもみえますが、あまり浸透していないのが実態です。理由の一つとして、データサイエンティストの担う業務の幅広さにあると考えられます。データ分析者の業務別にジョブ型雇用の割合を集計した結果をみると、データサイエンティストの業務は開発から教育など多岐にわたっており、業務内容によってジョブ型雇用の割合が異なることがわかります。

この結果から、データサイエンティストに対してジョブ型雇用を適用するには、業務内容を細分化しそれぞれに対して明確な職務を定義する必要があることがわかります。さらにそれぞれの職務に応じて適切な評価指標の設定も求められます。そのため評価指標のわかりやすい営業職などに比べてジョブ型雇用のしくみが複雑化する可能性が考えられます。
一方で近年データサイエンティストへの注目度を考えると、スキルをもった人材が増えていくことが考えられます。一定の負荷を伴うジョブ型雇用ですが、専門的なスキルを持つデータサイエンティストが、その能力を最大限に発揮し、活躍の場を広げることにつながります。ジョブ型雇用の導入により、データサイエンティストの能力が最大限に生かされ、企業のデータ駆動型戦略の推進や国際競争力の強化に寄与することを期待します。

データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
日本電気株式会社 齊藤敦美

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