2020.12.22

Data of DataScientest シリーズ vol.11『35%-基礎数学を得意とするデータサイエンティストの割合』

データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けに毎年アンケート調査を実施しています。
今回はデータサイエンティストのスキル、また目標とするレベルの推移について考察します。
vol.4でも述べられていますが、当協会ではデータサイエンティストに必要な3つのスキル(ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力)を定めています。2015年から2019年に実施したアンケート調査の結果で、それらの3つのスキルともに「現在のスキルレベル」「目標レベル」が減少傾向にあることがわかりました。さらに興味深かったのが「基礎数学(統計数理基礎)が得意である」と回答した割合は2019年のアンケート結果で35%であり、最も下落率が高かったことです。

データサイエンティストが得意としているスキルカテゴリ

このような現象がなぜ起こっているのでしょうか?考察します。
近年、データ分析の重要性が企業側にも浸透し、データ分析要員のニーズが高まっています。データサイエンティストがいなければ機械学習などを用いたデータサイエンスは難しく、新たに雇う必要があります。ただ、企業側で成功実績がなければデータサイエンティストの雇用に踏み切れない、そういった企業も私が見てきた中で少なくありません。そこで現在いる社員に分析業務を行ってもらい、統計や分析を専門とはしないが機械学習に長けた人材へと成長させる企業が増えています。
そのような人材は「市民データサイエンティスト」と呼ばれており、2018年のガートナー社のハイプサイクルでも2年から5年で主流採用とされていました。2020年12月現在はまさにその真っ只中であり、アンケート結果からもその様相が伺えます。
データサイエンティストの端くれとして日々分析業務を行っている私の個人的見解からすると、「市民データサイエンティスト」の増加には、良し悪しがあると考えています。AI技術の利用に数多くの企業が参画することによって、更なるAI技術の進歩につながる、それ自体は非常に良いことだと思います。
その一方で、分析業務には統計的な思考が必要なシーンも多々あり、行ってはいけないことも存在します。
そういったことを度外視し、AIモデルを実装する風潮になっていくことは警戒すべきであると考えています。現在は「AIを実装する人材」が不足しているのでそのような動きとなっていますが、やがて供給過多になれば今度は「AIをコントロールする人材」が求められるようになるかと思います。
AI技術は今後数十年間、そういった「AIを実装する人材」と「AIをコントロールする人材」の需給バランスの変動を繰り返し、進歩していくのかもしれません。

 

データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
日本電気株式会社 榛澤祐哉

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