2022.03.17
2年で100名!エンジニア派遣事業におけるデータサイエンティストの採用・育成 【Modis株式会社インタビュー】
データサイエンティストの採用・育成を開始した企業が増えています。
そのような企業様の実態に迫るべく、ITやR&D領域でエンジニア派遣、コンサルティング事業を手掛けられている、Modis株式会社にインタビューさせて頂きました。
データサイエンティストの育成企画発足から短期間での人材確保に成功した経緯や工夫について伺いました。
インタビューイ:
Modis株式会社 イノベーション&キャリア開発本部 テクニカルトレーニング部 福谷 一孝氏
Modis株式会社 イノベーション&キャリア開発本部 キャリアデザイン部 岩本 尚史氏
※所属役職は取材当時のもの
事業内容、データサイエンティストの採用について
––– 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、貴社の事業や、貴社におけるデータサイエンス業務の実態をお聞かせください。
Modis株式会社は、エンジニア派遣を主軸に事業を展開しています。エンジニアは約8,000名が所属しており、IT業界をはじめ様々な分野に人材派遣を行っております。昨今のお客様からの需要を受け、データサイエンス分野での人材派遣も開始しました。現在、約100名がデータサイエンティストとしてお客様先で活躍しております。
––– 主にどのような分野での需要が多いでしょうか?また、派遣期間や業務内容、対応されているエンジニアの皆様の世代など、差支えなければお聞かせください。
eコマースにおける売上向上施策の立案や、マーケット分析が多く、7割程度を占めています。自然言語処理・画像認識・音声認識など機械学習系の業務が2割程度です。通常のIT業界のSE派遣と同様のスキームで、データサイエンティストとして派遣しています。
派遣期間は3か月単位ですが、業務内容は多種多様です。シンプルに作業契約のこともあれば、シナリオ提案をすることもあります。データサイエンティストの平均年齢は26~27歳ぐらいで、若い世代が多いです。データサイエンスというトレンドを押さえている方が、若年層に多い印象です。男女比は女性3:男性7程度で、ITエンジニア(女性2:男性8)よりはやや女性が多い傾向です。
––– データサイエンティストの派遣はいつ頃から取り組まれているのでしょうか。
本格的に開始したのは2020年です。まずは2020年4月から3か月程度かけて、データサイエンティスト育成の研修を開始しました。この間はお客様先には派遣せず、リスキルの機会として集中して臨んで頂きました。その後、お客様の現場にデータサイエンティストとして配属しています。
データサイエンティストの新卒採用も同時に開始しており、未経験者も含めて育成しています。中途採用も常時募集しており、年間数人を採用しております。
––– 採用において重視されているポイントなどはありますか。例えば経験者であることや、保有資格など。
経験者の方はもちろん過去の業務経歴も重視しますが、未経験の方もそれなりの割合で採用しております。ヒューマン力も含めて総合的に評価し、育成後に現場に出る方もいれば、即戦力として活躍されている方もいます。データサイエンティストの資格としては、G検定やE資格などの統計・機械学習関連や、Python関連、またDS協会さんの新しい検定(DS検定)なども意識しております。DS検定は30名ほどが受験いたしました。
––– 受験いただき、ありがとうございます。DS協会で公開しているスキルセット(ビジネス、データサイエンス、データエンジニアリング)でいうと、どのタイプの方が多いですか?
ビジネス領域は担保しつつ、データサイエンス力を高めている方が多い傾向があります。データエンジニアリングは必ずしも強みとは限りません。これまでソフトウェア領域でデータベースなどを担当されていた方は、データエンジニアリングにも親和性があり、参加いただいていることもあります。
データサイエンティストの育成について
––– 育成の進め方や内容としては、どのような取り組みをされましたか。一律の研修で育成するのか、個別のスキル差に応じたコンテンツを提供するのか、など。
2020年4月時点で、数十名の育成を外部に委託して開始しました。内容は個別ではなく、一律に同じ研修を3か月で学んで頂きました。まずは基礎的な部分を伸ばし、取引先の反応や需要に応じて、専門性も高めていく考えでした。
その育成期間を経て、社内のデータサイエンティストになった人材を中心に、翌年からは社内で研修を実施しています。これにより、社員同士のコミュニケーションが増えて個別の対応もできるようになり、全体的なスキルも高まったと考えています。
––– データサイエンティスト100名というお話がありましたが、2020年4月から開始してそれだけの人数を育成されたのでしょうか。また、どのような方を対象にされましたか。
はい、初年度は数十名を育成し、その後育成も内部で実施するようになって、100名まで増えています。対象者は、元々社内のITエンジニアやR&Dエンジニアだった方の中から、興味を持つ人を募集しました。また、先ほども申し上げた通り、新卒・中途採用も進めております。
––– 育成での困りごとなどはありますか。OJT(On the Job Training)などは実施されているのでしょうか。
当社は人材派遣事業であるため、一定のスキルと業務経験を持った人材を派遣することが前提です。そのため、あまりOJTといった育成はせず、研修中心となっています。研修では、リアルなデータでいかに分析の各フェーズ(前処理や加工、プログラミングなど)を体験できるかが大切だと感じていますが、中々難しいです。また、対象ドメインの絞り方も工夫が必要と考えています。
社内制度について
––– 職種の呼称は何とされていますか。また、データサイエンス領域を手掛ける方々へのインセンティブなどはあるのでしょうか。
ネットワークエンジニア、サーバエンジニアといった職種と並べて、「データサイエンティスト」としています。特別にデータサイエンス領域ができるからインセンティブを加える、といった考え方はしていませんが、単価テーブルの差が給与にも反映される形になっています。お客様からの需要がある分、育成したエンジニアの流出は恐れるべき事態なので、フォローしております。
––– 職種をデータサイエンティストとして定義されているとのことでしたが、データサイエンティストに求める人材像や、評価基準はありますか。
多分野でデータサイエンスの知識が必要になってきていると感じています。当社では、マテリアルインフォマティクス(MI)など材料科学系のエンジニアが在籍しており、研修の準備を進めています。メカトロニクスなどの領域にも、データサイエンスの知識は必要になると考えます。
また、エンジニアがデータサイエンスの知識を身につけていくことも、めざしていきたい点です。さらに、データサイエンティストに限らず、統計やデータ分析の基礎知識は、どの社員にも必要な素養になってきていると考えています。そのため、評価基準としてもデータサイエンスに特化したものというよりは、全般的な業務能力の評価指標を用いて図っています。
今後の取り組みについて
––– 短期間での100名育成は素晴らしいですが、それでも足りないことはありますか。足りない場合、例えば新卒採用を現状の20名程度からさらに増やすなどは考えられていますか。
実際、弊社のデータサイエンティスト全員がお客様先で業務を行っている状態ですので、さらに増強したいと考えています。R&D企業では投資方針が固まっていないことも多いため、IT企業で求められているデータサイエンスの知見やスキルの需要も高まっています。とはいえ、育成のコストもあるため、新卒採用は現状20名程度が上限と考えています。足りない分は中途採用や既存社員からのデータサイエンスへのシフトでカバーしています。
––– 今後、データサイエンススキルの浸透はどのように進められるか、展望はございますか。
経営者の発信の中でも、重要テーマの一つとしてデータサイエンスをあげています。今までの業務だけに拘らず、柔軟にスキル構築を進めていく必要性を伝えています。軸足をどこに置くかは難しい話ですが、ある分野の専門家でかつ、DSを含む様々なスキルを持った人材を増やしていきたいです。
––– ありがとうござました。
■インタビュアー所感
————————————–
Modis株式会社様は、多様な企業様向けに人材を派遣する事業の中で、データサイエンスの需要や重要性を意識した育成施策を展開されていました。短期間で自社内の育成サイクルを確立し、データサイエンス人材を確保されているところから、人材派遣会社としての対応力の高さも伺えました。また、エンジニアとしての業務素養を持った方は、リスキル研修によるデータサイエンティストへのシフトもスムーズであると言えそうです。改めて、インタビューにご対応頂いた福谷様、岩本様、誠にありがとうございました。データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 澤晃平
日本電気株式会社 芳澤洋次郎
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