2023.06.13
Data of Data Scientist シリーズ vol.41『89.3%-「ビジネス力」を高めるために、困っていることがある人の割合』
データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けのショートリサーチを定期的に実施しています。Vol.40に続き、データサイエンティストの能力開発、とりわけ「ビジネス力」のスキルアップを切り口に調査した結果を紐解きます。
当協会で定義している、データサイエンティストに必要なスキルセットである、「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」。このうち「ビジネス力」の強化には、OJTによる現場での実践的なスキル・経験の醸成と、Off-JTによる体系的な知識両面が必要です。
Data of Data Scientist シリーズ vol.40『47%-ビジネス力を高めるためにOff-JTに取り組んでいる割合』
では、「ビジネス力」を高めるにあたって、データサイエンティストはどのような壁を経験しているのでしょうか。次のグラフは、「ビジネス力」を高めるために、困っていることについて、複数回答でお答えいただいた結果です。
最も多いのは「手本になる・教えてくれる人が周囲にいない」(44.7%)となりました。ビジネス力も、周囲からの指導を受けたりお手本になる人が近くにいたりすることが、スキルアップにつながると考える人が多いようです。
2019年-2021年に実施し、2022年に公開したデータサイエンティスト協会一般(個人)会員向けアンケートで、スキルセットを問わず、「データ分析・解析に関するスキルアップを考える際に、困っていること」を聞いた結果と比較してみましょう。(選択肢は若干変更していますが、複数回答のため、単純比較しています)
Data of Data Scientist シリーズ vol.37『63%-スキルアップの際に「手本になる・教えてくれる人」が周囲におらず困っているデータサイエンティストの割合』
「手本になる・教えてくれる人が周囲にいない」の順位は同じ1位になっていますが、選択されている割合は20%程度低くなっています。
スキルセットを問わずに調査した際は、2位が「スキルアップのための時間がない」(45-46%)でしたが、ビジネス力に特化して聞くと、この項目は順位が下がり、回答率も30.2%と少し低くなりました。一方で今回の調査では、「育成プログラムがない」「機械・情報が少ない」といった項目が、回答率が高くなっています。「ビジネス力」は、対応した育成プログラムや体系的な知識が他のスキルセットに比べて少なく、実践で身につけることが主となるスキルであることが現れていると考えられます。
「困っていることはない」は、10.7%となり、スキルセットを問わずに調査した際と数字上の差は小さい結果となりました。「ビジネス力」についても、90%近いデータサイエンティストは困りごとを抱えているようです。
具体的に、どのような困りごとがあるのでしょうか。業務で必要としているスキルセットについて「ビジネス力」と回答した人の自由記述をピックアップしてみました。
「ビジネス力」を高めるために困っていること(自由記述コメント抜粋)
- 正解にたどり着くまで時間が掛かる。経験知も重要と思う。
- 教材などもなく、顧客にぶつかってみないと学習する機会がない。
- 基本的には個別解を求めることになるので、答えがないのは当然という認識。場数を踏むことで経験値の蓄積ができるものの、その機会が少ない。
- マネージャーに提案しても受け入れられない。
- 定型業務、会議は効率化し、ビジネス力を養うための時間に充てたい。ビジネス力を測る尺度(利益創出、新事業開始、人材育成等々)がある程度明確になっていると、良いかもしれない。
サイエンス・エンジニアリングと比べ、「顧客」「マネージャー」とのコミュニケーションが重要になり、かつその「機会」・「場数」を必要と考える方が多いようです。また、最後の方のコメントにあるように、「ビジネス力を図る尺度」も、他のスキルセットより定量化が難しいと言えるでしょう。
データサイエンティストが取り組むビジネス上のデータ分析には、必ず目的があります。その目的を明確にするためには、ビジネスの状況を的確に把握して、ステークホルダに働きかけ、様々な要件や制約をクリアにして整理していく、ビジネス力が必要です。改めて、ご自身のビジネス力にも目を向け、客観的にスキルアップの余地を探ってみるのも良いかも知れません。
データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 澤晃平
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