2019.06.20
委員会便り 第17号 「実務家データサイエンティスト紹介 -スキル定義委員の菅さんの場合-」
皆さま、こんにちは。
データサイエンティストって文系でもなれるの?どういう人が活躍しているの?そんな疑問にお答えするべく、今回の委員会便りは、
経済学部出身でご自身がデータサイエンティストとして起業されている、データサイエンティスト協会スキル定義委員の菅 由紀子さんをご紹介します!
■今号の目次
(1)実務家データサイエンティスト紹介 ― 株式会社Rejoui代表取締役 菅さんの場合 ―
(2)お知らせ
(1)実務家データサイエンティスト紹介 ― 株式会社Rejoui代表取締役 菅さんの場合 ―
たくさん本を読むべし!
論理思考は国語力によって培われる!
2004年株式会社サイバーエージェント入社。株式会社インタースコープとの協業でネットリサーチ事業の立ち上げ、広告の販売や企画などに携わる。2006年3月に株式会社ALBERTに転じ、データ分析業務を担当。携帯キャリア、大手総合通販サイト、デジタルコンテンツ配信企業の顧客行動分析、CRM構築コンサルティング、DMP構築アドバイザリー等 多数のプロジェクトを担当。2016年9月にHR&Learning 分野専門の分析会社Rejoui を設立。退職者の事前予測、組織改善・パフォーマンス向上などHR領域においてのデータ分析・データ利活用支援に取り組んでいる。同社代表取締役をつとめながら関西学院大学大学院ビジネススクールにてマーケティングリサーチ、データ分析の講師としても活躍中。
データサイエンティストに必要な主たる3分野のスキルセット
― 菅さんのスキルセットを教えてください。
3つの円で言うと、私はビジネス、データサイエンスのスキルを中心に備え、エンジニアリングのスキルには課題があります。もちろん、エンジニアリング領域においてもデータサイエンティスト協会で定義したスキルチェックリストの★のスキルは網羅しており、★★のスキルについては、得意領域に関連して習得しています。★★★のスキルに関しては、実務で必要なシーンもありますし、スキル定義委員として知っておかなければならない領域ですので、どのようなシーンで活用されるスキルなのかやその重要性についてはもちろん理解しています。それは、データサイエンスの★★★のスキルで持っていないものについても同様です。
スキルチェックリストを刷新した2017年、スキル定義委員会のディスカッションの中で未知の言葉が出てきたときは、その場ですぐ調べ、次の委員会まで必死で勉強して委員会に臨んでいました(笑)。
専門領域に特化したスキルをもつことはもちろん大事ですが、プロジェクトを総括して推進していくスキル、力は誰しも必要だと思います。そういった立場にある人は特に、この3つのスキル領域の境界にあるスキル・タスクを深く理解していることが大事ですね。
ビッグデータ活用ブームのド真ん中で、膨大なデータに囲まれる日々
― 学生のときに得意だった教科などを教えて下さい。
国語は得意でしたが、特に不得意な教科があったわけではありませんでした。数学に苦手意識も持っておりませんでした。
大学での専攻は経済学部ですが、色々なことを好き放題学んでいました。
当時はデータサイエンティストという職業もありませんでしたし、特にITやデータ活用の領域に興味があったわけでもありませんでした。
読書や文章を書くことが好きでしたから、学生の頃、将来は編集者や記者などになれたら、とぼんやり思い描いていました。
― データサイエンティストになった経緯を教えて下さい。
サイバーエージェントに在籍していた頃、マーケティングリサーチの事業立ち上げを経験しました。サイバーエージェントが運営するメディアの会員にアンケートを取って分析して、結果を広告主に報告するサービスを立ち上げたのが、データ分析に関わるようになったきっかけです。
社会人2年目までVlookup関数も知らなかったですよ(笑)。
― 本当ですか!
はい。そのとき協業していた企業の方たちにマーケティングリサーチの設問設計と、データ分析を教えていただいたところからスタートしました。
最初の頃は本質を何も理解できていなくて、的はずれなことをやったことも沢山ありました。そして、その時の協業がご縁で創業間もないALEBRTに転職したのですが、その後も上司には叱られてばかりでした(笑)。
なんとか色々と出来るようになってきた頃、分析者として扱うデータも少しずつ量が増えて来て、処理が追いつかなくなり、少しずつ自分でプログラミングを勉強しました。
ALBERTは当時レコメンドエンジンの専門会社でしたので、ALBERTのエンジンが導入されていた数々のウェブサイトの膨大なデータを日々分析していました。「ビッグデータ」という言葉がまだない時代から大容量データを扱っており、ビッグデータがブームになり始めた頃は、ちょうどド真ん中でデータに溺れていました(笑)。アルゴリズム別に推薦結果を日夜眺めまくったのは良い思い出です。
その頃には取り扱うデータの量が手に負えなくなり、処理も複雑になってきましたので分析リテラシーの高いエンジニアと一緒に仕事をすることも増えていました。そしてその頃から、膨大なデータ処理に業務がひっ迫し、分析チームを立ち上げ、そのチームのマネジメントもするようになりました。
― 自分で分析するところからチームのメンバーをもつようになって、どのように変化がありましたか?
お恥ずかしい話ですが、自分とメンバーの分析結果が食い違うことがしばしば起こりました。コミュニケーション、工程管理の問題です。
また、手法によっては、パラメータの設定によって異なる結果になることもあります。それらをふまえ、自分がやってきたことをメンバーが同じように出来るようになる仕組みづくり、プラットフォーム作りなどを細かく意識するようになりました。
ITSS+のデータサイエンス領域のタスクリスト作成時にはその経験が活かせた気がします。
― 菅さんの最近の分析領域などについて具体的に教えてください。
現在は、Human Resources領域におけるデータ分析、データの利活用に尽力しています。人事に集まる評価・勤怠データなどを活用して、メンタルヘルス不調に罹患しそうな人や離職しそうな人を予測するモデル策定を企業の人事部の方々と取り組んでいます。何時に出社して何時に帰社したか、どの業務をどのくらいやったといった勤怠のデータは深く分析をすると大変興味深いですよ。
人事の担当者がデータをもとに的確に現状把握できれば、様々な施策が打てますし、成果がで出れば、そこで働く方々も楽しくHappyにパフォーマンスを発揮することが出来ます。そして組織全体も成果をあげられるようになるはずです。この領域のことはビジネスとして取り組んではいますが、”世の中全体の役に立つ” ということに、とてもやりがいを感じます。
― データサイエンティストになって良かったと思うことは?
この仕事の魅力は「社会の役に立つ」ということ。
そして、目の前に課題があって、仮説を立ててデータから解決策を見出した時に感じる爽快感は格別ということ。「これじゃん!」というひらめきの瞬間ですね。新たな発見があったときはすごく嬉しいです。そこに行き着くまではとても大変ですが、苦労があるからこそやり甲斐を感じられる仕事です。
また、データサイエンティストは成長産業に深く根幹から関わることのできる職業であり、市場からのニーズが高い領域です。これは働いて生きていく上でとても重要であると思います。
その他に、この仕事をしていてよかったと思う点は、世の中で語られていることが本当に妥当なことなのかを判断できるということです。情報リテラシーはデータリテラシーであると思います。
昨今のAIの過熱ぶりに対しても、正しい仕組みや方法を理解して、共に仕事する相手に「こういうことですよ」伝えられる、というのはこの仕事をしていて良かったと思えるところですね。
データサイエンティストを増やし、活躍できる社会を創るために
― 今後の夢や目標を教えて下さい。
データサイエンティストを増やしたい。そして、データサイエンティストの方たちが活躍できる社会にしたいという思いがあります。
データサイエンティストになりたいと思っていても何から学べばいいのかわからない、きっかけがない、うまくいかないという方が多くいます。そういった方々に、機会や場所を提供する活動をしていきたいです。
今年の3月には、WiDS Tokyo*1という米国スタンフォード大学と連携したデータサイエンスのシンポジウムが開催され、そこにRejouiとして特別協賛、私自身もパネリストとして登壇しました。日本の未来を担うデータサイエンティストの育成を支援するこの活動なども通じて、少しずつですが思いを実現しています。
今後、より効果的な支援を行う上では、データサイエンティストになりたいと思っているのに学習を始められない方たちや、やっているがうまく習得できないという方たちが、実際にどのような事で困っておられるのかを知り、解決策を探る必要があります。
私の会社では事業のひとつとして統計・データサイエンスのセミナーも開催しておりますが、まさに教えながらその答えを探っている最中です。
― データサイエンティストを目指す方に一言お願いします。
この世界は進歩が速いのが特徴です。学生であれば、その変化についていくだけの基礎体力をつけてほしいと思います。
データサイエンスの基本となる基礎的な科目と、あとは必要な情報を聞き出す力、調べる力が大事ですね。
社会人になって知らない業界のデータを扱うことになったら、まずその業界を理解することからスタートですから。
加えて、たくさん本を読むべし!論理思考は国語力。話す、聴く、書く!
この3つの能力は意識して修得してください。
人脈を広げることも大事です。
自分で答えが出せないとき、分からないとき、色々と調べたり専門書に当たるという解決策もありますが、どうやってもうまくいかないときは、私自身が専門家と思う方に聞きに行きます。
必要なときに、すぐに聞くことのできる人脈は宝物です。
学生時代は、そういった人脈を広げる活動の時間も沢山持つと良いと思います。
また、基礎体力をつけるのに、様々なデータにとにかく数多く触れるのはとても有効です。
データ処理1000本ノックという企画がスキル定義委員で進行中(?)と聞いています。
始まったら是非私もチャレンジしたいと思います。
― 菅さんありがとうございました!
*1 WiDS(Women in Data Science)は、米国スタンフォード大学Institute for Computational & Mathematical Engineering を中心とする、性別に関係なくデータサイエンティストを「奮起させる(inspire)」とともに、この分野に若い世代を誘うことを目的とした世界的な活動です。
(2)お知らせ
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