2022.11.07
Data of Data Scientist シリーズ vol.37『63%-スキルアップの際に「手本になる・教えてくれる人」が周囲におらず困っているデータサイエンティストの割合』
データサイエンティスト協会では、一般(個人)会員向けに毎年アンケート調査を実施しています。今回は、データサイエンティストのスキルアップを切り口に考察します。
2021年度の一般(個人)会員向けアンケートにおいて、データサイエンティストがスキルアップのために取り組んでいることとして最も多かった回答が「インターネット・雑誌等での情報収集」、次いで「専門的な書籍を購入しての業務外での学習」でした。この上位2つがそれぞれ7割近くを占めているのは、ここ3年間で同様の傾向です。
注目したいのは、上位2つに続く「カンファレンス・製品発表会などへの出席」や「有志の勉強会への出席」が減少傾向にあることです。これには、コロナ禍でカンファレンスや勉強会自体の開催が縮小したという要因が考えられるでしょう。
対して、「eラーニング」や「資格の取得」が増加傾向にあります。
「eラーニング」の増加は、企業内教育で従業員の「自律的学習」に注目が集まっていることが要因として考えられます。eラーニング教材をはじめとして、各従業員に個別最適化した学習機会を提供することで、従業員の自律的な成長と育成効率向上を図る企業が増えてきているのかも知れません(これには人事担当者の育成にかかる負担を削減したいという側面もあるでしょう)。
「資格の取得」は、そうしてそれぞれが獲得した知識・スキルを客観的に証明する役割で、需要が伸びていると考えられます。
データサイエンティストに必要なスキルを修得するための学習手段として、インターネットでの情報収集や書籍・eラーニングでの学習などは確かに有効ですが、これらは大半の場合、自分ひとりで学習を進めていくことになります。自分のスキルとペースに合わせて学習できるというポジティブな面もありますが、中・長期間にわたってモチベーションを維持するのが難しかったり、気軽に相談できる相手がいない場合は行き詰まりを覚えたりする場合も少なからずあるでしょう。また初学者がひとりでスキルアップを図ることは心理的・技能的なハードルがあるのも事実です。
実際に、データサイエンティストがスキルアップを考える際に抱えている困りごとの第一位は、「手本になる・教えてくれる人が周囲にいない」ことでした。データ分析に関する相談先やロールモデルの不足が課題として見えてきます。
このため、自己のスキルアップにあたって、質問や相談ができる機会や他のデータサイエンティストとの交流の機会を、学習者が積極的に増やしていく努力も求められます。
データサイエンティスト協会では、所属を超えてデータ分析に関わる人財が開かれた環境で交流や議論をし、自由に情報共有や意見発信ができる場を提供しています。その一つが、当協会設立以来、毎年開催しているシンポジウムです。最新のデータサイエンスの動向や有識者の知見に触れる機会になるとともに、データサイエンティスト同士による活発な意見交換が交わされ、スキルアップの意欲がさらに高まることでしょう。ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
今後、スキルアップのための学びの在り方も変化していくと考えられます。サポートやコーチングを受けられる機会と、一緒にスキルアップを図る仲間とのコミュニティの中で、真の「自律的学習」が実現されるのではないでしょうか。データサイエンティストのスキルアップを、私もスキルアップをめざす同志として応援しています。
データサイエンティスト協会 調査・研究委員会
株式会社日立アカデミー 市塲大夢
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